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2013/01/24

もし彼が今日電話してきたら…



10年が経った。でも僕には、そんなに経っていないように思える。Avvocatoが僕にとって未だに間近な思い出だからだろうか。早朝に鳴り響いていた、あの電話を、もう既に起きていたかのようなふりをして受け取った後、相変わらず目をこすりながら、受話器を置いて間もないような…

それでも、もう10年。一人の人がこんなにも深く身に心に入り込むと、決して消え去る事は無い。それでもやっぱり彼の存在が恋しい。彼のエレガンス、スタイル、情熱、美的感覚、公私共々の生き方。彼のスポーツへの愛情、サッカーへの、彼のユヴェントスへの、フェラーリへの、ボートへの、トリノへの愛情。
ユヴェントスファン、イタリア人みんな彼が居なくて寂しい。そして人生の一部の道のりを一緒に過ごすという名誉、幸運を受けた僕にとっても。


彼との初対面は忘れようがない…僕にとって特別良い思い出で、それは僕のセリエAで初めてのハットトリックと繋がっている。その時の僕は18歳で、僕にとってはすべてが新しくて、トップチームに加わったばかり。そしてあの日はパルマとのデビュー戦だった。Avvocatoが既に僕を知っていたかは分からない。というか、絶対知っていただろう。だって彼はかなりのサッカー通で、好奇心の旺盛な人。だからニューエントリーの僕の情報も得ていただろう。

僕らはUEFAカップから退敗したばかりで、ファンからも抗議されていて、一方パルマはというとアヤックス相手に勝ったところだった。あのNevio Scala監督のチームは、波に乗っていた。
Avvocatoはその難しい雰囲気、そしておそらく、僕らの自分たちの可能性に対して少し自信が無かったことを掴み取り、新聞にも書かれていたような、僕らのチームと彼らとの差、そんなものは全て実際にはないんだ、と僕らを元気づけたのだった。
そして、僕らが最大限の力を出すように刺激するために、ある新聞を持ってきて、そこに書かれた批判に反発したりした。
翌日、僕らはパルマに完勝した。そして僕はユヴェントスのユニフォームを着て、初めてのハットトリックを記録した。
彼のカリスマ性と彼の伝える事が出来た熱狂、これが彼との関係において初めてのインパクトだった。


数年後、彼は僕に何年も続いたあのニックネームをつけた。ユヴェントスにおけるロベルトバッジョとの引き継ぎの時期とでも言うか、そいう時だった。エキスパート、そしてアートに精通するAvvocatoはバッジョを‘ラファエロ’と定義し、僕を‘ピントゥリッキオ’と対照した。
初期の僕の反応はというとちょっと当惑したものだった。というか…ピントゥリッキオが誰なのか知らなかったのだ。それから誰だか調べて、彼が偉大な画家であるという事を知った。Avvocatoがどんな精神でそれを言ったか知っていたし、ユヴェントスでの最初の数年は僕のキャリアでとてもいい時期だったことから、僕はその定義に愛着を持った。


彼の定義、冗談はいつも鋭く、明快だった。でも批判は決して重くるしくなかった。他の経営陣、会長達とのやり取りを思えている。Avvocatoはいつも健全な競争を好み、最高の対戦相手達を尊敬し、称賛していた。ただ、競争、挑戦への好奇心を好んでいた。

もうビアンコネーロではなく、遠くにいる今、振り返ると、トリノでの20年間で僕が得られた幸運を、いつも以上に感じる。誰よりもユヴェントスを象徴し具体化した二人の人物に出会えた。パドヴァから僕をトリノに運んだジャンニ ボニペルティと僕を称賛してくれたAvvocatoだ。
ユヴェントスは彼の情熱だった。ただそれは彼が持っていたただ一つの情熱ではなく、彼は人生にそして人々に関心があった。
でもサッカーそしてユヴェントスは彼に取ってかけがえの無いものだった。周囲に居る人にその情熱を伝えていた。チームにも、僕たちにも。ユヴェントスを、そしてその一流選手達を愛していた。そしてその一流選手から愛されていた。一般の人からも愛されているように。
彼の葬式の日に起こった事は、それらを証明している。

初めて彼無しでの試合、対ピアチェンツァでの試合の前日、、僕らは埋葬室を訪れ、そこでの彼に別れを言いにきた人々の数に僕は驚いたものだった。一般の人々、経営陣から現場作業員まで。彼からそして彼の世界からも遠くにいた人々からも、尊敬の意が込められたシンプルなセレモニーにそれは心を打たれたものだった。

あのピアチェンツァで決めたゴールは僕にとって大事なゴールだ。あの特別な日、は偶然ではなかった。並外れの、最高のゴール。彼にもきっと気に入ってくれただろうし、スタンドから拍手を送ってくれただろうと確信している。


ここ数日、彼が僕に今どんな事を言うだろうかと考えた。世界を知り尽くし、美しいもの全てを愛していた彼だけに、オーストラリアで訪問すべき場所を勧めるために電話をしてきてくれたのではないかと…。
早朝6時にでも、電話してきてくれるだろう…でも今回は、ここシドニーで僕はちゃんと起きてる事だろう…

アレッサンドロ







2 件のコメント:

  1. Avvocatoはジャンニ・アニェッリのことですね。
    心からご冥福をお祈りいたします。

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  2. とても気品のある方ですよね。10年はあっという間な感じがします。

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